職業を知ろう!No.4『ナレーター』

職業を知ろう!No.4『ナレーター』【完全版】

2017/03/26

今回の「職業を知ろう!」は、〝ナレーター〟です。株式会社「研声舎」代表で、ナレーターの林恒宏さんへのインタビューを掲載します。

 

ナレーターとは、テレビ番組やラジオ番組などで、コンテンツに合わせてナレーション(朗読)をする仕事です。

 

前もって用意された原稿を読むことが中心となりますが、発声方法やイントネーション、抑揚の付け方などのスキルが要求されます。

 

テレビ・ラジオ番組以外にも、店舗案内や企業のPR映像用のナレーション、駅や銀行などで流れる自動音声を制作する際の元になるナレーションなど、ナレーターが活躍するフィールドは多岐に渡ります。

 

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研声舎ホームページ
http://kenseisya.net/about-1/

 

 


ーー林さんがナレーターという仕事に就かれたきっかけを教えて頂けますか?

 

林さん  僕は、もともとはお芝居から始まった人間なんです。演劇を高校時代に始めて、仲間たちと劇団を作りました。当時は、自分を表現することが嬉しく、楽しかったんです。

 

ーー自分自身を演劇を通して表現することが、林さんにとっての喜びだったんですね。

 

林さん  そうです。加えて言うなら、「目立ちたい、脚光を浴びたい」という思いが、少年時代から人一倍強い人間でした。

 

ーー「みんなから注目されたい」という思いが、非常に強かったと。

 

林さん  はい。一般的に、演劇をする人間の中には、幼少期から少年時代にかけて暗い過去があり、自分に自信を持つことが難しいタイプが少なからずいます。「自分に自信がない」というネガティヴな部分とバランスをとるために、演劇をしているような気がします。

 

ーーそれは意外に感じます。「演劇をする人は、華やかで明るく自信に満ちた人」というイメージがあるのですが。

 

林さん  もちろん、そのような方もいるでしょう。しかし一方では、その反対に位置する人間、つまり「自分に対して自信を持てない人間」が、案外と多くいます。僕も、その中の一人だったように思います。

 

ーー大変興味深いです。

 

林さん  その後、チケットを友人や知り合いに買ってもらい、ハードな練習の合間をぬって仕事をしながら演劇を続けていくうちに、だんだん疲弊していく自分がいました。「これを続けて何の意味があるのかな?」と考え始めたんです。

 

ーー大好きな演劇をしていたにもかかわらず、徐々に疲弊していったんですか?

 

林さん  疲弊していきました。そのうちに、知り合いや友人に演劇を観て頂いた後、『良かったよ、最高だったよ』と言われても、僕自身「本当にそう思って言ってくれてるのかな?そりゃ、面と向かって『面白くなかったよ』なんて、普通言えるわけないよな」と考えるようになりました。そして、演劇を10年ほどやった後に、「僕にとって表現することは、結局のところ、自分自身が気持ち良くなりたいだけではないか」と感じてしまったんです。

 

ーー自己満足にすぎなかったと。

 
林さん  そうです。それで、このまま続けていても意味がないから辞めようと思いました。ただ、元来、表現すること自体は好きでしたし、今までの自分の経験を生かせる仕事を何とか見つけられないかなと。その時に、劇団の先輩がナレーターという仕事をアルバイトでされていました。当時の自分にとって、「ナレーターっていいな、素敵だな」と魅力的に映ったんです。それで「ぜひ、自分もやってみたい!」となったわけです。

 

ーー劇団で演じていた経験から、ナレーターという仕事につながっていくわけですね。

 

林さん  はい。僕がナレーターを始めたいと考えた時期と、劇団メンバーを中心にナレーター事務所が創立された時期が同時期だったこともあり、ナレーターに本腰を入れるきっかけになりました。

 

ーーこれまでに大変だったことや、困難だったことはありましたか?

 

林さん  ナレーターを始めた当初が大変でした。ナレーターを始めた頃は、まだ劇団も続けていたので、深夜12時ぐらいまで劇団で練習した後に、ファミレスで早朝までアルバイトをしていました。ナレーターという仕事の依頼は、急に生まれることも多かったので、常に午前10時〜午後5時ぐらいまでは時間を空けておく必要がありました。駆け出しだった頃は仕事が少なかったので、仕事が発生した時、すぐにチャンスをつかめるように、時間を空けて常に準備を心がけていました。

 

ーーかなりハードな生活だったんですね。

 

林さん  当時、安定的に仕事があった先輩に比べると、新米の僕にはほとんど仕事がありませんでした。それでも、先輩の仕事のおこぼれを必死に拾おうと、常に準備していたからこそ、『林だったら、いつでも引き受けてくれる』という評価を得ることができたのだと思います。

 

ーー『信頼』を勝ち取ることができたんですね。

 

林さん  もちろん、すぐに評価を得ることができたわけではありません。それでも、だいたい3年ほど継続していると、そこそこ安定的に仕事が入ってくるようになり、ナレーターという仕事だけで生活できるようになりました。

 

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林さんの「伝わる声」が聞けます!
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ーーこの仕事をされて、どういう時に喜びを感じますか?

 

林さん  ナレーターとして言うのであれば、ブースの中で音声を録り終えた直後に、ブースの外にいらっしゃったクライアントさんから、「ありがとうございます!非常に良かったです。素敵なCMになりました」と言われた瞬間は、本当に嬉しいですね。

 

ーー「ありがとう」と感謝された瞬間ですね。

 

林さん  はい。また、ナレーターとは別に、「声について指導する仕事」もしておりますが、今まで声が上手く発声できていなかった生徒さんが、パッと声が出るようになると、非常に明るい表情になります。それを目の当たりにした時は、本当に嬉しいですね。

 

ーー生徒さんの嬉しそうな表情は、教える側も連動して嬉しくなります。

 

林さん  そうです。どんな立場であれ、人に喜んで頂くことが僕の喜びだと思います。

 

ーーこの仕事をされるうえで、気を付けていらっしゃること、心がけておられることは何ですか?

 

林さん  ナレーターとして、「上手くなりたい、深みのある声を出したい」と、技術だけを追いかけて努力してきたのですが、その途中で気づいたことがありました。

 

ーー気づいたこととは?

 

林さん  自分の声の中に、いやらしい部分と言うか、「どや顔」ならぬ「どや声」なるものが出てきてしまっていることに気づきました。

 

ーー自分の声に酔ってしまうようなイメージですか?

 

林さん  そうですね、「あざとさ」が見え隠れする感じの声です。それに気づかずに仕事をしていた時期もありましたね。今思い出すと恥ずかしいです。

 

ーーナレーターとしての「技術」ではなく、「心」の部分でしょうか?

 

林さん  そうだと思います。仕事を技術だけでやろうとすると、今でも「あざとい声」が出てきます。だから、そういった声が出ないように、聞いている方のことを常に考えながら、十分に心がけて仕事をしています。

 

 

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舞台での公演活動も精力的にこなす林さん

 

 

ーー先ほど、「声について指導する仕事」と言われましたが、それについて教えて頂けますか?

 

林さん  僕には、15年前から定期的に教えを乞うている師匠がいます。その方に会うために、今でも月に一、二度ほど東京へ出向いているんです。その方から指導を受けて二年ほど経過した時に、「人に教えなさい。声について東京で学んだことを、金沢で広めなさい。還元しなさい」と言われました。

 

ーー「東京でインプットしたことを、金沢でアウトプットしなさい」と師匠から言われたんですね。

 

林さん  そうです。でも、僕は人に接することが嫌いでしたから、最初は断りました。もともとは、自分の声が改善さえすれば良いと思っていましたから。「深みのある声」や「存在感のある声」が手に入れば、それで良いと思っていました。

 

ーーそれでも金沢で教え広めていくことを選択されたのは、なぜですか?

 

林さん  師匠から「言われた通りにやらないと破門だよ」と言われたからです。さすがに、破門にはなりたくなかったですから(笑)

 

ーー実際に人に教えてみて、御自身の中で何か変化はありましたか?

 

林さん  声に関する理解が、いっそう深まりました。人に教えることで、「理解したつもりになっていた自分」に気付くことができました。人に教えることによって、アウトプットする大切さを僕自身が学びましたね。

 

ーー人に教えることが、御自身の「学び」につながったんですね。ところで、林さんの教室では、どのようなことを学べるのですか?

 

林さん  本部がある東京の教室をはじめとして、金沢にある僕の教室も「話し方」を指導する教室ではありません。学んで頂くことは、「声そのものを改善すること」です。

 

ーー「声そのものを改善すること」と言われましたが、もう少し具体的に解説して頂けますか?

 

林さん  例えば、ある判事さんが、東京の教室へ学びに来られたことがありました。

 

ーー判事さんというのは、裁判所の判事さんですか?

 

林さん  はい。判事さんとは、人の一生を左右する最後の判決文を、ケースによっては長時間かけて、自らの声で伝えなければならない職業です。ところが、その判事さんは、判決文を読み上げるときに、声がかすれてしまうことが時々あったそうです。「人の一生を左右するような大切な場面で、カスカスの声になってしまうのは失礼だ。そんなことがあっては決してならない」と思われて、習いに来られたそうです。

 

ーー非常に職業意識の高い方ですね。なるほど、「声そのものを改善する」の意味が少し理解できました。

 

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「モテ声講座」って気になりますよね。。

 

 

林さん  もちろん、判事さんだけでなく、人前で話す機会が多い学校の先生や講師、営業で人と接する機会が多いビジネスマンもいらっしゃいます。

 

 ーー言われてみれば、声を使う仕事はたくさんありますね。

 

林さん  最近では、就職活動を控えた学生さんもいらっしゃいます。面接官に好印象を与えたい場合も、声を磨くと結果につながりやすいと思います。

 

 ーーなるほど、社会人だけでなく学生さんも、声を磨くことによって、就職活動を有利にもっていけそうですね。若い世代から、自分の声に関心を持つことで多くのメリットがありそうです。

 

林さん  そうだと思います。実は、6年前から地元の小学校で、定期的に朗読ボランティアをおこなっています。もともとは、朗読を通じて、活字離れが進んでいる子供たちに、日本文学の楽しさを知って頂き、読書に関心を持って頂けたら、と思ったことがきっかけでした。

 

 ーー林さんの声で朗読してもらえると、物語の世界にグイグイ引き込まれていきそうです。

 

林さん  朗読を始めると、彼らの顔つきが変わり、目に光が宿るのが分かるんです。

 

 ーー小学生の時期から、林さんのような「存在感のある声」や「伝わる声」に触れることは、声に関心を持つことにもつながりそうですね。

 

林さん  そう願っています。実際、声を磨くことで表現性が増し、コミュニケーションも変わります。自分の声に自信を持てれば、心に余裕も持てるので、人前で堂々と話しやすくなるんです。

 

 ーーなるほど。「自分の声を磨くことで、他者と交流しやすくなる」という観点は興味深いです。例えば、「不登校」や「ひきこもり」の生徒さんたちの中には、自分の声を磨くことによって、「一歩前へ出る勇気が生まれる」きっかけになるのかもしれません。

 

林さん  そうですね。その可能性はあるでしょう。付け加えて言うと、子供さんだけでなく、その親御さんも、自分たちの声を磨くことは非常に大切なのではないでしょうか。

 

 ーー親御さんもですか?

 
林さん  はい。当然ながら、親御さんの声によって子供も少なからず影響を受けているはずです。したがって、親御さんの声が磨かれて変われば、その子供にも何らかのポジティブな作用が働くことは想像できます。

 

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小学校での朗読ボランティアの様子

 

 

林さん  僕自身、学生の頃は、常に周囲の反応を気にしながら行動するような人間でした。自分という存在を押し殺して、「親や学校の先生に好かれよう、周囲に当たり障りのない存在でいよう」と努めていました。

 

 ーー何事も、周囲の空気を読みながら決めていく生き方、つまり、本当の自分の人生を歩んでいない感じだったのですか?

 

林さん  そうです。そうなってしまうと、それにふさわしい声、つまり暗い声や、自信のない声しか出ませんでした。そのような生き方をして、何が一番良くないかというと、その「自信のない声」を他でもない自分自身が、日々聞き続けているということです。その声を聞き続けているために、だんだんと負のスパイラルにはまっていってしまうんです。

 

 ーー悪循環に陥り、自己肯定感も育っていかないですね。

 

林さん  生きている実感を持てないと思います。その悪い状態を変えるために、どれだけ本を読み、たくさん勉強して理屈で分かろうとしても、その良くない声を自分自身が聞いている限りは、なかなか簡単にはそこから抜け出せない現実があります。

 

 ーー抜け出すために、時間がかかりますね。

 

林さん  そこから抜け出す一つの方法として、理屈云々は置いといて、まずは「声を改善する」こと、自分のなかに「しっかりした声を作ること」が、悪い流れを変えるきっかけになります。例えば、自分が不安になったり、心細くなった時に、「大丈夫だ!」とか「いける!」のようなキーワードを決めて、それを芯の通った声、自分に響く声を自分に向けて発することで、自分で自分の背中を押すことができます。

 

 ーー「自分の声で自分の背中を押せる」というのは、心強いですね。

 

林さん  そうです。それと同時に、先ほど言ったように、親御さんの声も非常に大切です。子供は親の声を毎日聞くはずです。親御さんの声が改善されると、当然ながら、その声を毎日聞く子供にも大きな影響を与えるでしょう。

 

 ーー林さんが言われるように、自分の声に焦点を当てて改善すると同時に、家族の声も重要であるということが理解できました。今までは、不登校の問題を「声」から改善していくという発想すらありませんでした。「目から鱗」です。

 

林さん  「声」という存在は、一般の人たちが思っている以上に、大きな影響力を持っているということです。

 

ーー最後に、今後の目標について話して頂けますか?

 

林さん  人のため世のためになるような活動を継続していきたいです。僕の活動に対して、周りの人が「良い取り組みだね」と言って加わってくれるような活動です。

 

 ーー例えば、どのような活動ですか?

 

林さん  「声」というものについて、もっと広めていく使命が僕にあると信じてやっています。「世の中のためにやるんだ」と決めてやることが大切だと感じています。

 

 ーー非常に心強いです。そのような活動をしようと考えるに至ったきっかけは何ですか?

 

林さん  若い頃は、師匠がいる東京へ出向いて、「深みのある声」や「存在感のある声」が自分に手に入れば、それで十分だと思っていました。それが、師匠と出会って数年後に、ここ金沢で声について教え始めたことをきっかけに、しだいに自分自身が変わってきたんだと思います。

 

 ーー師匠との出会いが大きかったのですね。

 

林さん  50〜100年後の、日本人のコミュニケーションを真剣に考えている師匠の考えに共感しています。少々、壮大に聞こえるかもしれませんが。

 

 ーー実際、今日まで普段の生活の中で自分が発する声に、それほど大きな意識を払っていませんでした。でも、今回、林さんのお話を伺いながら、自分の発する声が本当に大切であることを知りました。

 

林さん  声というのは、人と人とがコミュニケーションをとる上の根幹です。声を育てることで、自分の意思をしっかり言えるようになります。声を改善することで、自分に自信を持てるようになります。今後も、できる限り貢献していきたいです。

 

 ーー林さんの今後の活躍に期待しております。今日は本当にありがとうございました。

 

(聞き手・工藤拓哉)

 

 

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林 恒宏 さん

ナレーター・音声言語指導者・「株式会社 研声舎」代表。
北陸を中心にテレビ・ラジオ番組・CMなどのナレーションで活躍中。
音声言語指導者の磯貝靖洋氏(Vocal Arts Service Center主宰 本部東京)に2002年より師事。現在、「声とことばの磯貝メソッド®」の正講師。「声とことばの磯貝メソッド金沢塾」の代表でもある。 出演舞台は、寺院や能楽堂での「林恒宏の独り語り」など多数あり。

職業を知ろう!No.4『ナレーター』❼

2017/03/23

ーー最後に、今後の目標について話して頂けますか?

 

林さん  人のため世のためになるような活動を継続していきたいです。僕がする活動に対して、周りの人が「良い取り組みだね」と言って加わってくれるような活動です。

 

ーー例えば、どのような活動ですか?

 

林さん  「声」というものについて、もっと広めていく使命が、僕にあると信じてやっています。「世の中のためにやるんだ」と決めてやることが大切だと感じています。

 

ーー非常に心強いです。そのような活動をしようとに考えるに至ったきっかけは何ですか?

 

林さん  若い頃は、師匠がいる東京へ出向いて、「深みのある声」や「存在感のある声」が自分に手に入れば、それで十分だと思っていました。それが、師匠と出会い、数年後に、ここ金沢で声について教え始めたことをきっかけに、しだいに自分自身が変わってきたんだと思います。

 

ーー師匠との出会いが大きかったのですね。

 

林さん  50〜100年後の、日本人のコミュニケーションを真剣に考えている師匠の考えに共感しています。少々、壮大に聞こえるかもしれませんが。

 

ーー実際、今日まで普段の生活の中で自分が発する声に、それほど大きな意識を払っていませんでした。でも、今回、林さんのお話を伺いながら、自分の発する声が本当に大切であることを知りました。

 

林さん  声というのは、人と人とがコミュニケーションをとる上の根幹です。声を育てることで、自分の意思をしっかり言えるようになります。声を改善することで、自分に自信を持てるようになります。今後も、できる限り貢献していきたいです。

 

ーー林さんの今後の活躍に期待しております。今日は本当にありがとうございました。

 

(聞き手・工藤拓哉)

 

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林 恒宏 さん

ナレーター・音声言語指導者・「株式会社 研声舎」代表。
北陸を中心にテレビ・ラジオ番組・CMなどのナレーションで活躍中。
音声言語指導者の磯貝靖洋氏(Vocal Arts Service Center主宰 本部東京)に2002年より師事。現在、「声とことばの磯貝メソッド®」の正講師。「声とことばの磯貝メソッド金沢塾」の代表でもある。 出演舞台は、寺院や能楽堂での「林恒宏の独り語り」など多数あり。

職業を知ろう!No.4『ナレーター』❻

2017/03/21

林さん  僕自身、学生の頃は、常に周囲の反応を気にしながら行動するような人間でした。自分という存在を押し殺して、「親や学校の先生に好かれよう、周囲に当たり障りのない存在でいよう」と努めていました。

 

ーー何事も、周囲の空気を読みながら決めていく生き方、つまり、本当の自分の人生を歩んでいない感じだったのですか?

 

林さん  そうです。そうなってしまうと、それにふさわしい声、つまり暗い声や、自信のない声しか出ませんでした。そのような生き方をして、何が一番良くないかというと、その「自信のない声」を他でもない自分自身が、日々聞き続けているということです。その声を聞き続けているために、だんだんと負のスパイラルにはまっていってしまうんです。

 

ーー悪循環に陥り、自己肯定感も育っていかないですね。

 

林さん  生きている実感を持てないと思います。その悪い状態を変えるために、どれだけ本を読み、たくさん勉強して理屈で分かろうとしても、その良くない声を自分自身が聞いている限りは、なかなか簡単にはそこから抜け出せない現実があります。

 

ーー抜け出すために、時間がかかります。

 

林さん  そこから抜け出す一つの方法として、理屈云々は置いといて、まずは「声を改善する」こと、自分のなかに「しっかりした声を作ること」が、悪い流れを変えるきっかけになります。例えば、自分が不安になったり、心細くなった時に、「大丈夫だ!」とか「いける!」のようなキーワードを決めて、それを芯の通った声、自分に響く声を自分に向けて発することで、自分で自分の背中を押すことができます。

 

ーー「自分の声で自分の背中を押せる」というのは、心強いですね。

 

林さん  そうです。それと同時に、先ほど言ったように、親御さんの声も非常に大切です。子供は親の声を毎日聞くはずです。親御さんの声が改善されると、当然ながら、その声を長時間聞く子供にも大きな影響を与えるでしょう。

 

ーー林さんが言われるように、自分の声に焦点を当てて改善すると同時に、家族の声も重要であるということが理解できました。今までは、不登校の問題を「声」から改善していくという発想すらありませんでした。「目から鱗」です。

 

続く。

 

 

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林さんの「伝わる声」が聞けます!

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職業を知ろう!No.4『ナレーター』❺

2017/03/18

林さん  もちろん、判事さんだけでなく、人前で話す機会が多い学校の先生や講師、営業で人と接する機会が多いビジネスマンもいらっしゃいます。

 

ーー言われてみれば、声を使う仕事はたくさんありますね。

 

林さん  最近では、就職活動を控えた学生さんもいらっしゃいます。面接官に好印象を与えたい場合も、声を磨くと結果につながりやすいと思います。

 

ーーなるほど、社会人だけでなく学生さんも、声を磨くことによって、就職活動を有利にもっていけそうですね。若い世代から、自分の声に関心を持つことで多くのメリットがありそうです。

 

林さん  そうだと思います。実は、6年前から地元の小学校で、定期的に朗読ボランティアをおこなっています。もともとは、朗読を通じて、活字離れが進んでいる子供たちに、日本文学の楽しさを知って頂き、読書に関心を持って頂けたら、と思ったことがきっかけでした。

 

ーー林さんの声で朗読してもらえると、物語の世界にグイグイ引き込まれていきそうです。

 

林さん  朗読を始めると、彼らの顔つきが変わり、目に光が宿るのが分かるんです。

 

ーー小学生の時期から、林さんのような「存在感のある声」や「伝わる声」に触れることは、声に関心を持つことにもつながりそうですね。

 

林さん  そう願っています。実際、声を磨くことで表現性が増し、コミュニケーションも変わります。自分の声に自信を持てれば、心に余裕も持てるので、人前で堂々と話しやすくなるんです。

 

ーーなるほど。「自分の声を磨くことで、他者と交流しやすくなる」という観点は興味深いです。例えば、「不登校」や「ひきこもり」の生徒さんたちの中には、自分の声を磨くことによって、改善へと向かうきっかけになるケースがあるのかもしれません。

 

林さん  そうですね。その可能性はあるでしょう。付け加えて言うと、子供さんだけでなく、その親御さんも、自分たちの声を磨くことは非常に大切なのではないでしょうか。

 

ーー親御さんもですか?

 

林さん  はい。当然ながら、親御さんの声によって子供も少なからず影響を受けているはずです。したがって、親御さんの声が磨かれて変われば、その子供にも何らかのポジティブな作用が働くことは想像できます。

 

続く。

職業を知ろう!No.4『ナレーター』❹

2017/03/16

ーー先ほど、「声について指導する仕事」と言われましたが、それについて教えて頂けますか?

 

林さん  僕には、十年ちょっと前から定期的に教えを乞うている師匠がいます。その方に会うために、今でも月に一、二度ほど東京へ出向いているんです。その方から指導を受けて二年ほど経過した時に、「人に教えなさい。声について東京で学んだことを、金沢で広めなさい。還元しなさい」と言われました。

 

ーー「東京でインプットしたことを、金沢でアウトプットしなさい」と師匠から言われたんですね。

 

林さん  そうです。でも、僕は人に接することが嫌いでしたから、最初は断りました。もともとは、自分の声が改善さえすれば良いと思っていましたから。「深みのある声」や「存在感のある声」が手に入れば、それで良いと思っていました。

 

ーーそれでも金沢で教え広めていくことを選択されたのは、なぜですか?

 

林さん  師匠から「言われた通りにやらないと破門だよ」と言われたからです。さすがに、破門にはなりたくなかったですから(笑)

 

ーー実際に人に教えてみて、御自身の中で何か変化はありましたか?

 

林さん  声に関する理解が、いっそう深まりました。人に教えることで、「理解したつもりになっていた自分」に気付くことができました。人に教えることによって、アウトプットする大切さを僕自身が学びましたね。

 

ーーアウトプットが大切だったんですね。ところで、林さんの教室では、どのようなことを学べるのですか?

 

林さん  うちは話し方を指導する教室ではないので、「話し方」については教えておりません。学んで頂くことは、「声そのものを改善すること」です。

 

ーー「声そのものを改善すること」を求めて、どのような方が学びに来られるのですか?

 

林さん  例えば、過去に判事さんが学びに来られたことがありました。

 

ーー判事さんというのは、裁判所の判事さんですか?

 

林さん  はい。判事さんとは、人の一生を左右する最後の判決文を、そのケースによっては長時間かけて自らの声で伝えなければならない職業です。ところが、その判事さんは、判決文の結論にあたる主文にいたる前に、声がかすれてしまうことが時々あったそうです。「人の一生を左右するような大切な場面で、カスカスの声になってしまうのは失礼だ。そんなことがあっては決してならない」と思われて、習いに来られたそうです。

 

ーー非常に職業意識の高い方ですね。なるほど、「声そのものを改善する」の意味が少し分かりました。

 

続く。

職業を知ろう!No.4『ナレーター』❸

2017/03/13

ーーこの仕事をされて、どういう時に喜びを感じますか?

 

林さん  ナレーターとして言うのであれば、ブースの中で音声を録り終えた直後に、ブースの外にいらっしゃったクライアントさんから、「ありがとうございます!非常に良かったです。素敵なCMになりました」と言われた瞬間は、本当に嬉しいですね。

 

ーー「ありがとう」と感謝された瞬間ですね。

 

林さん  はい。また、ナレーターとは別に、「声について指導する仕事」もしておりますが、今まで声が上手く発声できていなかった生徒さんが、パッと声が出るようになると、非常に明るい表情になります。それを目の当たりにした時は、本当に嬉しいですね。

 

ーー生徒さんの嬉しそうな表情は、教える側も連動して嬉しくなります。

 

林さん  そうです。どんな立場であれ、人に喜んで頂くことが僕の喜びだと思います。

 

ーーこの仕事をされるうえで、気を付けていらっしゃること、心がけておられることは何ですか?

 

林さん  ナレーターとして、「上手くなりたい、深みのある声を出したい」と、技術だけを追いかけて努力してきたのですが、その途中で気づいたことがありました。

 

ーー気づいたこととは?

 

林さん  自分の声の中に、いやらしい部分と言うか、「どや顔」ならぬ「どや声」なるものが出てきてしまっていることに気づきました。

 

ーー自分の声に酔ってしまうようなイメージですか?

 

林さん  そうですね、「あざとさ」が見え隠れする感じの声です。それに気づかずに仕事をしていた時期もありましたね。今思い出すと恥ずかしいです。

 

ーーナレーターとしての「技術」ではなく、「心」の部分でしょうか?

 

林さん  そうだと思います。仕事を技術だけでやろうとすると、今でも「あざとい声」が出てきます。だから、そういった声が出ないように、聞いている方のことを常に考えながら、十分に心がけて仕事をしています。

 

続く。

職業を知ろう!No.4『ナレーター』❷

2017/03/11

林さん  その後、チケットを友人や知り合いに買ってもらい、ハードな練習の合間をぬって仕事をしながら演劇を続けていくうちに、だんだん疲弊していく自分がいました。「これを続けて何の意味があるのかな?」と考え始めたんです。

 

ーー大好きな演劇をしていたにもかかわらず、徐々に疲弊していったんですか?

 

林さん  疲弊していきました。そのうちに、知り合いや友人に演劇を観て頂いた後、『良かったよ、最高だったよ』と言われても、僕自身「本当にそう思って言ってくれてるのかな?そりゃ、面と向かって『面白くなかったよ』なんて、普通言えるわけないよな」と考えるようになりました。そして、演劇を10年ほどやった後に、「僕にとって表現することは、結局のところ、自分自身が気持ち良くなりたいだけではないか」と感じてしまったんです。

 

ーー自己満足にすぎなかったと。

 

林さん  そうです。それで、このまま続けていても意味がないから辞めようと思いました。ただ、元来、表現すること自体は好きでしたし、今までの自分の経験を生かせる仕事を何とか見つけられないかなと。その時に、劇団の先輩がナレーターという仕事をアルバイトでされていました。当時の自分にとって、「ナレーターっていいな、素敵だな」と魅力的に映ったんです。それで「ぜひ、自分もやってみたい!」となったわけです。

 

ーー劇団で演じていた経験が、ナレーターという仕事につながっていくわけですね。

 

林さん  はい。僕がナレーターを始めたいと考えた時期と、劇団メンバーを中心に、ナレーター事務所が創立された時期が同時期だったこともあり、ナレーターに本腰を入れるきっかけになりました。

 

ーーこれまでに大変だったことや、困難だったことはありましたか?


林さん  ナレーターを始めた当初が大変でした。ナレーターを始めた頃は、まだ劇団も続けていたので、深夜12時ぐらいまで劇団で練習した後に、ファミレスで早朝までアルバイトをしていました。ナレーターという仕事の依頼は、急に生まれることも多かったので、常に午前10時〜午後5時ぐらいまでは空けておく必要がありました。駆け出しだった頃は仕事が少なかったので、仕事が発生した時、すぐにチャンスをつかめるように、時間を空けて常に準備を心がけていました。

 

ーーかなりハードな生活だったんですね。

 

林さん  当時、安定的に仕事があった先輩に比べると、新米の僕にはほとんど仕事がありませんでした。それでも、先輩の仕事のおこぼれを必死に拾おうと、常に準備していたからこそ、『林だったら、いつでも引き受けてくれる』という評価を得ることができたのだと思います。

 

ーー『信頼』を勝ち取ることができたんですね。

 

林さん  もちろん、すぐに評価を得ることができたわけではありません。それでも、だいたい3年ほど継続していると、そこそこ安定的に仕事が入ってくるようになり、ナレーターという仕事だけで生活できるようになりました。

 

続く。

 

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小学校での朗読ボランティアの様子

 

職業を知ろう!No.4『ナレーター』❶

2017/03/10

今回の「職業を知ろう!」は、〝ナレーター〟です。今日から数回にわたり、株式会社「研声舎」代表で、ナレーターの林恒宏さんへのインタビューを掲載します。

 
ナレーターとは、テレビ番組やラジオ番組などで、コンテンツに合わせてナレーション(朗読)をする仕事です。

 

前もって用意された原稿を読むことが中心となりますが、発声方法やイントネーション、抑揚の付け方などのスキルが要求されます。

 

テレビ・ラジオ番組以外にも、店舗案内や企業のPR映像用のナレーション、駅や銀行などで流れる自動音声を制作する際の元になるナレーションなど、ナレーターが活躍するフィールドは多岐に渡ります。

 

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研声舎ホームページ

http://kenseisya.net/about-1/

 

 


ーー林さんがナレーターという仕事に就かれたきっかけを教えて頂けますか?

 

林さん  僕は、もともとはお芝居から始まった人間なんです。演劇を高校時代に始めて、仲間たちと劇団を作りました。当時は、自分を表現することが嬉しく、楽しかったんです。

 

ーー自分自身を演劇を通して表現することが、林さんにとっての喜びだったんですね。

 
林さん  そうです。加えて言うなら、「目立ちたい、脚光を浴びたい」という思いが、少年時代から人一倍強い人間でした。

 

ーー「みんなから注目されたい」という思いが、非常に強かったと。

 
林さん  はい。一般的に、演劇をする人間の中には、幼少期から少年時代にかけて暗い過去があり、自分に自信を持つことが難しいタイプが少なからずいます。「自分に自信がない」というネガティヴな部分とバランスをとるために、演劇をしているような気がします。

 

ーーそれは意外に感じます。「演劇をする人は、華やかで明るく自信に満ちた人」というイメージがあるのですが。

 

林さん  もちろん、そのような方もいるでしょう。しかし一方では、その反対に位置する人間、つまり「自分に対して自信を持てない人間」が、案外と多くいます。僕も、その中の一人だったように思います。

 

ーー大変興味深いです。

 

続く。

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