職業を知ろう!No.2『加賀象嵌(かがぞうがん)作家』

職業を知ろう!No.2『加賀象嵌作家』【完全版】

2017/01/03

今回の「職業を知ろう!」は、加賀象嵌(かがぞうがん)作家です。今日から数回にわたり、加賀象嵌作家である坂井天心さんへのインタビューを掲載します。

 

『加賀象嵌(かがぞうがん)』をご存知でしょうか?『加賀象嵌』とは、石川県金沢市に伝わる伝統工芸技法の一つで、高度な技術が必要とされます。

 

象嵌(ぞうがん)とは、金属の表面を彫り、できた溝にほかの金属をはめこんで、いろいろな模様を作り出す技のことです。「象」の字には「かたどる」、「嵌」の字には「はめる」という意味があります。

 

日本の象嵌産地には、金沢の他に、高岡や京都、熊本などがあります。藩政時代、現在の金沢市笠市町と安江町の辺りは、多くの象嵌師が住んでいたことから、象眼町(ぞうがねまち)と名付けられていました。「ずがねまち」とも「ぞうがんまち」とも言われたそうです。

 

石川県には、坂井さんをはじめ、今も象嵌作家さんが活躍しております。花器やオブジェ、ペンダントやピアス、ブレスレットなどのアクセサリー、スプーンや箸置き、ネクタイピンなど、様々な加賀象嵌作品や商品があります。

 

 

ーー坂井さんが、この職業を目指したきっかけを教えて頂けますか?

 

坂井さん  実は、私の父も加賀象嵌作家なんです。そのため、物心ついた時から、父が仕事をする姿を間近で見て育ちました。朝から晩まで、父の作業部屋からコンコン、カンカンと音がするのを聞きながら、「いったい何をやっているんだろう?」と(笑)。とにかく、学生時代は「絶対に父と同じ職業には就きたくない」と思っていました。

 

ーーなぜ、当時そのように思われたのですか?

 

坂井さん  伝統工芸というものに、全く関心を持てなかったというか、本当に嫌でした。加賀象嵌という伝統工芸が何なのかを、知ろうとさえしませんでした。正直言うと、伝統工芸の香りがする金沢という街そのものが、当時は好きではありませんでした。だから、高校卒業と同時に逃げるように金沢を離れ、名古屋に行きました。それ以来、数年前まで名古屋に住んでいました。ちなみに、前職は伝統工芸とは全く関係のない仕事でした。

 

ーーそうだったんですね。その後、何がきっかけで金沢に戻ってこられたのですか?

 

坂井さん  金沢を長い間離れ、遠方で働くうちに、伝統工芸に対する自分の考え方に変化があったのかもしれません。いろいろ迷って考えた末に、金沢に戻って父の後継者になり、加賀象嵌の技術を受け継ぐことを決断しました。

 

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金沢市大手町にある「ギャラリーセーブル」

 

 

ーー金沢に戻って来られた後、どのようにして加賀象嵌の技術を学ばれたのですか?

 

坂井さん  父が現役の加賀象嵌作家なので、父から直接指導を受けて学びました。ただ、いろいろ質問できる反面、親子特有のやりにくさはありましたね。

 

ーー「やりにくさ」と言うと?

 

坂井さん  もちろん、仕事に関して分からない所などがあれば、いつでも父に聞けるので大変ありがたいです。その一方で、親子なので、何と言うか、やはり何かと思うことはいろいろありますよね(笑)それでも、現在はだいぶ慣れました。

 

ーーその辺りは、坂井さん御自身でないと分からない御苦労が、いろいろあったということなんですね。

 

坂井さん  そうですね。何に関しても同じかもしれませんが、良い面もあれば、そうではない面もあります。必ず両面があるのではないでしょうか。

 

ーー加賀象嵌作家として、仕事を開始される前と開始された後で、「こんなはずじゃなかった」のようなギャップは、実際にありましたか?

 

坂井さん  ありましたね。幼少期から父がする仕事を見てきましたが、実際に仕事をしてみると、私が予想していたことと全然違っていました。特に最初の頃は、専門用語が多くて、わけが分からなかったですね。それと、一つの作品を作るために、想像以上の時間がかかるということを思い知りました。加賀象嵌は、電動工具などはいっさい使わず、全て手作業で作るので、作品によっては数ヶ月かかるものもあります。だから、思った以上に体力が必要なんです。

 

ーー坂井さんが予想された以上に、大変な世界だったんですね。

 

坂井さん  大変でした。今になって振り返ると、最初の1〜2年は本当にしんどかったですね。「あぁ、名古屋に帰りたい」と毎日思っていた時期もあったぐらいです。その頃は、金沢に帰ってきたことを後悔していました(笑)

 

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ーー最初の1〜2年は辛かったということでしたが、現在はいかがですか?

 

坂井さん  今はこの仕事にのめり込んでいます(笑)

 

ーー「のめり込んでいる」と言われましたが、坂井さんにとって辛かった仕事が、のめり込むまでになったきっかけは何だったのですか?

 

坂井さん  この仕事に就いて2年目だった頃に、私と仲間二人でグループ展を開催したんです。その時に、予想以上に多くのお客様に来て頂きました。今でも覚えていますが、そのグループ展に来られた一人のイタリア人に、私の商品が気に入られ、購入して頂きました。その頃は、作家としての経験は当然今より浅く、まだよく分からずに商品を作っていた時期でした。そんな時期に、私の作った物を購入して頂いたことが本当に嬉しかったんです。

 

ーーそれは本当に嬉しいでしょうね。

 

坂井さん  「私が作った物を買ってくれる人がいるんだ」と感激したことを、今でもよく覚えています。非常にモチベーションが上がり、やる気がわいてきましたね。その時に、「お客様が喜んで頂けるような物をもっと作りたい」という強い思いが、自然にわきあがってきました。それ以降、この仕事にのめり込んでいったのだと思います。

 

ーー大変よく分かりました。坂井さんにとって、そのグループ展は、ある意味でターニングポイントになったのかもしれませんね。

 

坂井さん  そうですね。私にとっては非常に重要なグループ展でした。

 

ーーところで、休日はどのように過ごされていますか?

 

坂井さん  図書館で商品のデザインを考えていることが多いですね。本来であれば、働く時はしっかり働いて、休日はしっかり休むというように、メリハリをつけたほうが良いのかもしれませんが、どうしても仕事のことを考えてしまいます。

 

ーーその辺りも、「仕事にのめり込んでいる」という現在の状態を表しているのでしょうか?

 

坂井さん  そういう言い方もできますね。私にとって、今は仕事にのめり込む時期なのかもしれません。

 

ーー坂井さんが仕事をされるうえで、大切にしていること、気を付けていることは何ですか?

 

坂井さん  いらっしゃったお客様一人一人に、加賀象嵌について丁寧に解説することです。ここに来られるお客様の多くは、加賀象嵌に関してほとんど知りません。加賀象嵌を少しでも理解して頂き、興味を持って頂くことが、ここに再び足を運んでくださることにつながるのだと思います。

 

ーーまずは、加賀象嵌を知ってもらうこと、関心を持ってもらうことが大切なんですね。

 

坂井さん  その通りです。それを意識してお客様に接することは、私や加賀象嵌に携わる人たちの未来にとって、大変重要だと思います。

 

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ーーこれまでに、苦労されたことは何でしたか?

 

坂井さん  展覧会がある時に、作品の搬入の締め切りを危うく過ぎそうになったことは、何度もありました。

 

ーー締め切りギリギリまで作業をされることが多いのですか?

 

坂井さん  そうですね、わりと多いです。例えば、県立美術館に作品を持っていかなければならなかった時、締め切り時間の10分前まで、ここで作業をしていたこともありました。その時は、かなり危なかったです(笑)

 

ーーもし万が一、締め切り時間に遅れたら、どうするんですか?

 

坂井さん  同じ展覧会であれば、来年まで待つしかありませんね。ただ、2ヶ月ぐらいかかって、やっとの思いで完成した作品ですから、やっぱり締め切りに間に合わせたいですね。

 

ーーその他に、苦労されたことはありますか?

 

坂井さん  「素晴らしい商品のアイデアがひらめいた!」と思っても、実際にテスト品を作ってみると、全然期待ハズレになってしまい、失望することは多いですね。

 

ーー多いんですか?

 

坂井さん  私の場合、半分ぐらいそんな感じです。また、商品を作っても一個も売れないとか、悲しいですが実際にありましたね(笑)

 

ーー坂井さんにとって、この仕事のやりがいは何でしょうか?

 

坂井さん  思い描いた通りの作品や商品を作れた瞬間も、もちろんやりがいを感じますが、私の作品や商品を通して、いろいろなお客様にお会いできることでしょうか。

 

ーーいろいろなお客様にお会いできることなんですね。

 

坂井さん  そうですね、いろいろなお客様にお会いして、私が作った商品を通して、お客様に喜んで頂くことが何よりのやりがいです。

 

ーーお客様の喜ぶ顔を見れることは、本当に魅力的ですね。

 

坂井さん  その通りです。お客様の中には、購入された商品を身につけられて、再び展覧会に来てくださる方もいらっしゃいますし、購入された食器を御家庭で使用されている場面を撮って、送信してくださる方もいらっしゃいます。本当に嬉しいです。

 

ーーやはり、お客様に商品を使って頂けることが嬉しいんでしょうか?

 

坂井さん  作家さんにもよりますが、私の場合は、鑑賞する工芸品よりも、日常生活の中で普段使いのできる工芸品を作りたいと思っています。使って頂けることは、作家冥利に尽きます。

 

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加賀象嵌の制作体験もできます。

 

 

ーー加賀象嵌の作家さんは、どんな性格の方が多いのでしょうか?

 

坂井さん  難しい質問ですね。「良い作品を作りたい」と思う、純粋な方が多いのではないでしょうか。良い意味で、社会に揉まれていない感じかもしれません。それと、個性も強いと思います。

 

ーー純粋で個性が強いんですね。

 

坂井さん  特に、私の父世代の作家が、その傾向は強いかもしれません。話をすると非常に面白いです。

 

ーー坂井さんの今後の目標を教えて頂けますか?

 

坂井さん  加賀象嵌をもっと多くの方に知って頂きたいです。地元の金沢でさえ、加賀象嵌を知らない方は多いと思います。とにかく、現在より加賀象嵌を普及させたいですね。

 

ーー加賀象嵌を普及させるために、どうすれば良いのでしょうか?

 

坂井さん  宣伝することも、もちろん大切ですが、私たち作家が良い商品を作ることが一番大切だと思います。多くの良い商品が創り出せれば、徐々に普及すると信じています。

 

ーー坂井さんが制作された、砂金を使ったアクセサリーが北國新聞で紹介されました。粒状の砂金を使用するのは珍しいと聞いています。

 

坂井さん  そうですね。自分で採った砂金を使うことで、金沢の由来を知ってもらい、加賀象嵌を多くの人に知ってもらうきっかけにしたかったんです。伝統の良さを生かしながらも、新しい物も創り出していく努力をしています。

 

ーーこの記事を読んで、加賀象嵌に興味を感じている方にメッセージをお願いします。

 

坂井さん  ぜひ一度、こちらの「ギャラリーセーブル」にお越しください。もちろん、見学だけでも構いませんし、もしご都合良ければ、加賀象嵌の制作体験に参加することも可能です。気軽に加賀象嵌に見て触れて頂きたいです。

 

ーー加賀象嵌を気軽に体験できるのは嬉しいですね。今日は長時間のインタビュー取材を引き受けてくださり、本当にありがとうございました。

 

(聞き手・工藤拓哉)

 

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加賀象嵌の魅力を引き出す取り組み。

 

 

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坂井 天心さん
金沢市出身。4年前に約20年勤めた愛知県内の会社を辞め、故郷の伝統工芸を継ぐ。現在は、加賀象嵌作家として、金沢市大手町にある「ギャラリーセーブル」で作品・商品の制作に励む。

 

ギャラリーセーブル
〒920-0912
石川県金沢市大手町7-29
TEL 090-1569-5972
営業時間 10:00~18:00
(企画展開催時は変更)
定休日 火曜日
駐車場 3台
ホームページ http://www.gallerysable.jp

職業を知ろう!No.2『加賀象嵌作家』❺

2016/11/25

ーー加賀象嵌の作家さんは、どんな性格の方が多いのでしょうか?

 

坂井さん  難しい質問ですね。「良い作品を作りたい」と思う、純粋な方が多いのではないでしょうか。良い意味で、社会に揉まれていない感じかもしれません。それと、個性も強いと思います。

 

ーー純粋で個性が強いんですね。

 

坂井さん  特に、私の父世代の作家が、その傾向は強いかもしれません。話をすると非常に面白いです。

 

ーー坂井さんの今後の目標を教えて頂けますか?


坂井さん  加賀象嵌をもっと多くの方に知って頂きたいです。地元の金沢でさえ、加賀象嵌を知らない方は多いと思います。とにかく、現在より加賀象嵌を普及させたいですね。

 

ーー加賀象嵌を普及させるために、どうすれば良いのでしょうか?

 

坂井さん  宣伝することも、もちろん大切ですが、私たち作家が良い商品を作ることが一番大切だと思います。多くの良い商品が創り出せれば、徐々に普及すると信じています。

 

ーー坂井さんが制作された、砂金を使ったアクセサリーが北國新聞で紹介されました。粒状の砂金を使用するのは珍しいと聞いています。

 

坂井さん  そうですね。自分で採った砂金を使うことで、金沢の由来を知ってもらい、加賀象嵌を多くの人に知ってもらうきっかけにしたかったんです。伝統の良さを生かしながらも、新しい物も創り出していく努力をしています。

 

img_0156

加賀象嵌の魅力を引き出す取り組み。

 

 

ーーこの記事を読んで、加賀象嵌に興味を感じている方にメッセージをお願いします。

 

坂井さん  ぜひ一度、こちらの「ギャラリーセーブル」にお越しください。もちろん、見学だけでも構いませんし、もしご都合良ければ、加賀象嵌の制作体験に参加することも可能です。気軽に加賀象嵌に見て触れて頂きたいです。

 

ーー加賀象嵌を気軽に体験できるのは嬉しいですね。今日は長時間のインタビュー取材を引き受けてくださり、本当にありがとうございました。

 

(聞き手・工藤拓哉)

 

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◎加賀象嵌の制作体験もできます。

 

 

坂井 天心さん

金沢市出身。4年前に約20年勤めた愛知県内の会社を辞め、故郷の伝統工芸を継ぐ。現在は、加賀象嵌作家として、金沢市大手町にある「ギャラリーセーブル」で作品・商品の制作に励む。

 

ギャラリーセーブル

〒920-0912
石川県金沢市大手町7-29

TEL 090-1569-5972

営業時間 10:00~18:00
(企画展開催時は変更)

定休日 火曜日
駐車場 3台

ホームページhttp://www.gallerysable.jp

 

職業を知ろう!No.2『加賀象嵌作家』❹

2016/11/24

ーーこれまでに、苦労されたことは何でしたか?

 

坂井さん  展覧会がある時に、作品の搬入の締め切りを危うく過ぎそうになったことは、何度もありました。

 

ーー締め切りギリギリまで作業をされることが多いのですか?

 

坂井さん  そうですね、わりと多いです。例えば、県立美術館に作品を持っていかなければならなかった時、締め切り時間の10分前まで、ここで作業をしていたこともありました。その時は、かなり危なかったです(笑)

 

ーーもし万が一、締め切り時間に遅れたら、どうするんですか?

 

坂井さん  同じ展覧会であれば、来年まで待つしかありませんね。ただ、2ヶ月ぐらいかかって、やっとの思いで完成した作品ですから、やっぱり締め切りに間に合わせたいですね。

 

ーーその他に、苦労されたことはありますか?

 

坂井さん  「素晴らしい商品のアイデアがひらめいた!」と思っても、実際にテスト品を作ってみると、全然期待ハズレになってしまい、失望することは多いですね。

 

ーー多いんですか?

 

坂井さん  私の場合、半分ぐらいそんな感じです。また、商品を作っても一個も売れないとか、悲しいですが実際にありましたね(笑)

 

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ーー坂井さんにとって、この仕事のやりがいは何でしょうか?

 

坂井さん  思い描いた通りの作品や商品を作れた瞬間も、もちろんやりがいを感じますが、私の作品や商品を通して、いろいろなお客様にお会いできることでしょうか。

 

ーーいろいろなお客様にお会いできることなんですね。

 

坂井さん  そうですね、いろいろなお客様にお会いして、私が作った商品を通して、お客様に喜んで頂くことが何よりのやりがいです。

 

ーーお客様の喜ぶ顔を見れることは、本当に魅力的ですね。

 

坂井さん  その通りです。お客様の中には、購入された商品を身につけられて、再び展覧会に来てくださる方もいらっしゃいますし、購入された食器を御家庭で使用されている場面を撮って、送信してくださる方もいらっしゃいます。本当に嬉しいです。

 

ーーやはり、お客様に商品を使って頂けることが嬉しいんでしょうか?

 

坂井さん  作家さんにもよりますが、私の場合は、鑑賞する工芸品よりも、日常生活の中で普段使いのできる工芸品を作りたいと思っています。使って頂けることは、作家冥利に尽きます。

 

続く。

 

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◎坂井さんオススメの『ぐい呑み』

職業を知ろう!No.2『加賀象嵌作家』❸

2016/11/23

ーー最初の1〜2年は辛かったということでしたが、現在はいかがですか?

 

坂井さん  今はこの仕事にのめり込んでいます(笑)

 

ーー「のめり込んでいる」と言われましたが、坂井さんにとって辛かった仕事が、のめり込むまでになったきっかけは何だったのですか?

 

坂井さん  この仕事に就いて2年目だった頃に、私と仲間二人でグループ展を開催したんです。その時に、予想以上に多くのお客様に来て頂きました。今でも覚えていますが、そのグループ展に来られた一人のイタリア人に、私の商品が気に入られ、購入して頂きました。その頃は、作家としての経験は当然今より浅く、まだよく分からずに商品を作っていた時期でした。そんな時期に、私の作った物を購入して頂いたことが本当に嬉しかったんです。

 

ーーそれは本当に嬉しいでしょうね。

 

坂井さん  「私が作った物を買ってくれる人がいるんだ」と感激したことを、今でもよく覚えています。非常にモチベーションが上がり、やる気がわいてきましたね。その時に、「お客様が喜んで頂けるような物をもっと作りたい」という強い思いが、自然にわきあがってきました。それ以降、この仕事にのめり込んでいったのだと思います。

 

ーー大変よく分かりました。坂井さんにとって、そのグループ展は、ある意味でターニングポイントになったのかもしれませんね。

 

坂井さん  そうですね。私にとっては非常に重要なグループ展でした。

 

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ーーところで、休日はどのように過ごされていますか?

 

坂井さん  図書館で商品のデザインを考えていることが多いですね。本来であれば、働く時はしっかり働いて、休日はしっかり休むというように、メリハリをつけたほうが良いのかもしれませんが、どうしても仕事のことを考えてしまいます。

 

ーーその辺りも、「仕事にのめり込んでいる」という現在の状態を表しているのでしょうか?

 

坂井さん  そういう言い方もできますね。私にとって、今は仕事にのめり込む時期なのかもしれません。

 

ーー坂井さんが仕事をされるうえで、大切にしていること、気を付けていることは何ですか?

 

坂井さん  いらっしゃったお客様一人一人に、加賀象嵌について丁寧に解説することです。ここに来られるお客様の多くは、加賀象嵌に関してほとんど知りません。加賀象嵌を少しでも理解して頂き、興味を持って頂くことが、ここに再び足を運んでくださることにつながるのだと思います。

 

ーーまずは、加賀象嵌を知ってもらうこと、関心を持ってもらうことが大切なんですね。

 

坂井さん  その通りです。それを意識してお客様に接することは、私や加賀象嵌に携わる人たちの未来にとって、大変重要だと思います。

 

続く。

 

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職業を知ろう!No.2『加賀象嵌作家』❷

2016/11/22

ーー金沢に戻って来られた後、どのようにして加賀象嵌の技術を学ばれたのですか?

 

坂井さん  父が現役の加賀象嵌作家なので、父から直接指導を受けて学びました。ただ、いろいろ質問できる反面、親子特有のやりにくさはありましたね。

 

ーー「やりにくさ」と言うと?

 

坂井さん  もちろん、仕事に関して分からない所などがあれば、いつでも父に聞けるので大変ありがたいです。その一方で、親子なので、何と言うか、やはり何かと思うことはいろいろありますよね(笑)それでも、現在はだいぶ慣れました。

 

ーーその辺りは、坂井さん御自身でないと分からない御苦労が、いろいろあったということなんですね。

 

坂井さん  そうですね。何に関しても同じかもしれませんが、良い面もあれば、そうではない面もあります。必ず両面があるのではないでしょうか。

 

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ーー加賀象嵌作家として、仕事を開始される前と開始された後で、「こんなはずじゃなかった」のようなギャップは、実際にありましたか?

 

坂井さん  ありましたね。幼少期から父がする仕事を見てきましたが、実際に仕事をしてみると、私が予想していたことと全然違っていました。特に最初の頃は、専門用語が多くて、わけが分からなかったですね。それと、一つの作品を作るために、想像以上の時間がかかるということを思い知りました。加賀象嵌は、電動工具などはいっさい使わず、全て手作業で作るので、作品によっては数ヶ月かかるものもあります。だから、思った以上に体力が必要なんです。

 

ーー坂井さんが予想された以上に、大変な世界だったんですね。

 

坂井さん  大変でした。今になって振り返ると、最初の1〜2年は本当にしんどかったですね。「あぁ、名古屋に帰りたい」と毎日思っていた時期もあったぐらいです。その頃は、金沢に帰ってきたことを後悔していました(笑)

 

続く。

 

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職業を知ろう!No.2『加賀象嵌作家』❶

2016/11/21

今回の「職業を知ろう!」は、加賀象嵌(かがぞうがん)作家です。今日から数回にわたり、加賀象嵌作家である坂井天心さんへのインタビューを掲載します。

 

『加賀象嵌(かがぞうがん)』をご存知でしょうか?『加賀象嵌』とは、石川県金沢市に伝わる伝統工芸技法の一つで、高度な技術が必要とされます。

 

象嵌(ぞうがん)とは、金属の表面を彫り、できた溝にほかの金属をはめこんで、いろいろな模様を作り出す技のことです。「象」の字には「かたどる」、「嵌」の字には「はめる」という意味があります。

 

日本の象嵌産地には、金沢の他に、高岡や京都、熊本などがあります。藩政時代、現在の金沢市笠市町と安江町の辺りは、多くの象嵌師が住んでいたことから、象眼町(ぞうがねまち)と名付けられていました。「ずがねまち」とも「ぞうがんまち」とも言われたそうです。

 

石川県には、坂井さんをはじめ、今も象嵌作家さんが活躍しております。花器やオブジェ、ペンダントやピアス、ブレスレットなどのアクセサリー、スプーンや箸置き、ネクタイピンなど、様々な加賀象嵌作品や商品があります。

 

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「ギャラリーセーブル」のホームページ

http://www.gallerysable.jp

 

 

 

ーー坂井さんが、この職業を目指したきっかけを教えて頂けますか?

 

坂井さん  実は、私の父も加賀象嵌作家なんです。そのため、物心ついた時から、父が仕事をする姿を間近で見て育ちました。朝から晩まで、父の作業部屋からコンコン、カンカンと音がするのを聞きながら、「いったい何をやっているんだろう?」と(笑)。とにかく、学生時代は「絶対に父と同じ職業には就きたくない」と思っていました。

 

ーーなぜ、当時そのように思われたのですか?

 

坂井さん  伝統工芸というものに、全く関心を持てなかったというか、本当に嫌でした。加賀象嵌という伝統工芸が何なのかを、知ろうとさえしませんでした。正直言うと、伝統工芸の香りがする金沢という街そのものが、当時は好きではありませんでした。だから、高校卒業と同時に逃げるように金沢を離れ、名古屋に行きました。それ以来、数年前まで名古屋に住んでいました。ちなみに、前職は伝統工芸とは全く関係のない仕事でした。

 

ーーそうだったんですね。その後、何がきっかけで金沢に戻ってこられたのですか?

 

坂井さん  金沢を長い間離れ、遠方で働くうちに、伝統工芸に対する自分の考え方に変化があったのかもしれません。いろいろ迷って考えた末に、金沢に戻って父の後継者になり、加賀象嵌の技術を受け継ぐことを決断しました。

 

続く。

 

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